今 は 亡 き 御 先 祖 様 を 供 養 し , 感 謝 す る
お盆は「盆と正月」といわれるように,昔から年中行事として,日本人にとって最も大切な行事でした。正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といいます。「霊祭り」「精霊会」「盆祭」とも呼びます。「盂蘭盆」はインドの古い言葉「ウランバナ」を漢字に訳したものです。「ウランバナ」は倒懸(とうけん)と訳されており,その意味は,「さかさまにぶらさげられる」ほどの苦しみを表現しています。
お盆の始まりについては、「盂蘭盆経」の中の親孝行の大切さを説いた教えが、昔から知られています。それは、「お釈迦様の弟子の中で、神通力第一とされている目連尊者が、ある時神通力によって亡き母が餓鬼道に落ち、逆さ吊りにされ苦しんでいると知りました。そこで、どうしたら母親を救えるのか、お釈迦様に相談に行きました。するとお釈迦様は、おまえが多くの人に施しをすれば、母親は救われると言われました。そこで目連尊者はお釈迦様の教えに従い、夏の修行期間のあける七月十五日に、多くの僧たちに飲食物をささげて供養したのです。すると、その功徳力によって、母親は救われた。」という話です。
もし,先祖が,そんな苦しみにあっているならば,なんとか救ってあげたい,と願うのは人間の自然な感情です。お盆の行事の目的は苦しんでいる先祖の霊をなぐさめたいと,願う心から生まれた行事だ,といえます。また,「ウランバナ」とは,お釈迦さまの時代にインドで行われていた「祖先祭」の名前であったと,伝えられています。
わが国では,盂蘭盆会は推古天皇の時代(606 年) に斉会(さいえ)を設けたのが始まり, とされています。その後, 斉明天皇の時代に盂蘭盆を催したことが,はっきりと記録に残っています。また,日本人がながい間かかって,育てた美しい民俗的な宗教感情の中に,私達の先祖が,盆と正月の年二回,生きている私達のもとに帰ってくるという考え方があります。盆の行事は,そうした考え方の中で,育まれてきました。それを「タマ信仰」ともいいます。
現在、日本各地で行われているお盆の行事は、各地の祖霊信仰の風習などが加わたり、宗派による違いなどありますが、ご先祖や故人の霊が帰って来ると考えられています。家庭では、家族や親戚が集まり、ご先祖や故人の霊を迎え、感謝供養する行事として行われています。
お 盆 の 準 備
お 盆 に ふ さ わ し い お 飾 り を
先祖の霊をおむかえし,そして送るのですから,お盆の準備はしっかりしておきたいものです。仏壇や仏具をきよめ,供える花や野菜も用意しておきます。昔は盆市がたって,お盆の備えものはそこでそろえました。
お盆には「精霊棚」(しょうりょうだな),いわゆる盆棚を設けることが多いようです。仏壇を一般庶民の家に揃えるようになったのは,江戸時代になってからです。それ以前は先祖の霊をむかえるためには棚を作る必要がありました。「精霊棚」はその名残ともいえます。なかなかいいものです。「精霊棚」がつくれない場合には,仏壇には盆にふさわしい飾り,野菜などを供えたいものです。精霊棚に飾るキウリの馬は,先祖の精霊が,それに乗って帰ってくることを意味し,ナスの牛は,荷物を持ってお帰りにことを意味する,と考えられています。
お 盆 の 行 事
1日(釜蓋朔日)
1日を釜蓋朔日(かまぶたついたち)といい、地獄の釜の蓋が開く日であり一般的に1日からお盆である。この日を境に墓参などして、ご先祖様等をお迎えし始める。地域によっては山や川より里へ通じる道の草刈りをするが、これは故人が山や川に居るという文化に則り、その彼岸からお還りになる故人が通りやすいように行う。
7日(七夕、棚幡)
7日は七夕であるが、そもそも七夕は棚幡とも書き、故人をお迎えするための精霊棚とその棚に安置する幡を拵える日であり、その行為を7日の夕方より勤めたために棚幡がいつしか七夕に転じたともいう。7日の夕刻から精霊棚や笹、幡などをご安置する。 なお、お盆期間中、僧侶に読経してもらい報恩することを棚経(たなぎょう)参りというが、これは精霊棚で読むお経が転じて棚経というようになった。
13日 (迎え火・精霊棚を飾る)
夕方になったら盆提灯に火を灯します。家の門口で火を焚き,ご先祖様を迎えます。この時に焚く火が「迎え火」です。その燃やした煙にのって,先祖の霊が戻ってくると,古来より信じられてきたのが,そのはじまりです。また,ところによっては,朝か夕方お墓に行き,お墓で迎え火を焚き,その火を盆提灯に入れて持ち帰る,という例もあります。
14日・15日 (お墓・お寺まいり)
この期間に,先祖のお墓まいりをし,お寺の法要(施食会)にお参ります。当山の施食会は毎年7日午前中にお勤めします。
精霊棚や仏壇に故人の好物などを供えるようにします。お供えするものを決めているところもありますが,家族の食べるものの一部でよいでしょう。
16日(送り火)
この日は,家に迎えた先祖を送る日,門口で送り日を焚いて,先祖の霊が帰るとき,足もとが暗くならないように照らしてやるわけです。
地方によっては村全体が共同で,大きなかかり火を焚くところもあります。京都の大文字焼きは有名ですが,じつはお盆の送り火の一種なのです。また16日の夕刻は「精霊流し」「燈篭流し」といって,お盆の供え物,飾り物をまとめ,小さな船に乗せて川や海に流す風習があります。これも先祖を送る儀式です。
盆の期間中、寺社の境内に老若男女が集まって踊るのを盆踊りという。これは地獄での受苦を免れた亡者たちが、喜んで踊る状態を模したといわれる。夏祭りのクライマックスである。
24日(地蔵盆)
故人を送る期間であるが、16日から24日までであり、お迎え同様に墓参などをして勤める。佛教では普通お盆は1日から24日を指す。 これは、地獄の王は閻魔王であるが、その王と対になるのが地蔵菩薩であり、24日の地蔵菩薩の縁日までがお盆なのである。地蔵菩薩は中近世以降子供の守り神として信仰されるようになった。広く知られた伝説によれば、地蔵菩薩が、親より先に亡くなった子供が賽の河原で苦しんでいるのを救うという。このことから地蔵祭においては特に子供が地蔵様の前に参り、その加護を祈る習わしになっています。
当山では、夕方7時30分頃よりお勤めをします。近在の方々がお参りされ「地蔵嘆偈」というお経を読み、地蔵様に感謝の誠を捧げます。お参りください。
棚 経
家 族 そ ろ っ て お 参 り し た い も の で す
お盆の期間中,あるいはその前後に住職さんにきていただき,仏壇や精霊棚の前でお経をあげていただくことを「棚経」(たなぎょう)といいます。この期間中は住職さんにがいつ来られてもいいようにしておきたいものです。
この期間中は住職さんにとって,1年で一番忙しい行事が集中する時です。そこでお盆の前から棚経に回るケ-スも珍しくありません。できれば,家族そろって,住職さんの後ろに坐り,心から先祖をお迎えするようにしたいものです。
新 盆
故 人 へ の 思 い が 特 に 強 い
故人の忌明けがすみ,はじめて迎えるお盆を「新盆」(初盆)といいます。お盆は亡くなった人の霊をお迎えし,なぐさめる行事です。亡くなってから1年に満たない時点で迎えるお盆は,故人への思いがとても強いものです。
そのため新盆は,特別に,お飾りやお供えを盛大にしたりします。親戚や故人と親しかった人が,新盆を迎えた家に盆提灯などを贈ることもあります。
親しい方が,亡くなって新盆を迎えた人がいるような場合は,お盆の期間中やその前後に,一度,お見舞い方々お参りに行ってあげるようにしたいものです。
見えなくてもお花を供えたり
食べなくてもおいしい物を供えたり
話さなくとも語りかけたり
そうした、見えざるものへの真心は美しい
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